遺言書の種類は主に3種類!どれを作れば良いか
遺言書を作ろうかなと思ったけど、作り方はどうすればよいのだろう、何か決まりはあるの?
作る遺言書の種類によるメリット、デメリットはなんだろう?
そんな疑問はないでしょうか?
この記事では、遺言書の種類のうち特に知っておくべき3種類とそのメリットとデメリットを比較しています。
遺言書の作成のサポートや手続きの代理を業務としている司法書士が、日々の業務の経験から遺言書についてご説明します。
あなたに合った遺言書はどれなのかを私の経験からアドバイス!
遺言書の種類は主に3種類!(+隠れた4種類)

遺言の入り口として、民法では次のように決められています。
民法960条(遺言の方式) 遺言は、この法律に定める方式に従わなければ、することができない。 出典:e-Govウェブサイト(https://www.e-gov.go.jp) |
「民法の通りに作らないと遺言にはならないよ」と言われてしまいました。
方式とは一体どんなものなのか、次のような種類があります。
普通方式 | 自筆証書遺言(オススメ) |
公正証書遺言(オススメ) | |
秘密証書遺言 | |
特別方式 | 死亡危急時遺言 |
伝染病隔離者遺言 | |
在船者遺言 | |
船舶遭難者遺言 |
漢字がいっぱいで読む気も無くなりそうなくらい種類がありますが、全てを覚える必要は全くありません。
メジャーな3つを中心に説明していきますね。
自筆証書遺言は手軽&アップデート派の方向け
自筆証書遺言はまずは手軽に作ってみたいという方や、今後細かく変更をしていく予定がある方にオススメな方式です。 遺言書というとみなさんはどのようなイメージをするでしょうか。
自筆証書遺言はそんなイメージに一番近い遺言書です。自筆、と書かれているように紙に手書きして作ります。
民法でのルールはこんな感じ。
民法 第968条(自筆証書遺言) 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自署し、これに印を押さなければならない。 出典:e-Govウェブサイト(https://www.e-gov.go.jp) |
・本人が手書きで内容、日付、氏名を書いてくださいね
・本人の印鑑を押してね
ということです。一から十まで自分でやるのが自筆証書遺言です。
メリット | デメリット |
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メリット1.一人で作れる手軽さ
自筆証書遺言は、自分だけで全てが完結します。そのため「遺言書を作るぞ!」と思い立って30分後から作り始めることだってできます。35分後には「やっぱやーめた。」と紙をくしゃくしゃにして捨てても誰にも迷惑がかかりません。他と比べてその手軽さ、気軽さは圧倒的です。しかもちゃんと完成すれば他の遺言書と効力は全く同じです。
メリット2.内容を秘密にしたまま完成できる
自分一人だけで作れるので、実際に開けてみるまで何が書かれているのか他人にはバレません。遺言書なら中身分からないのが当たり前じゃないの?
と思う方もいるのではないでしょうか。
そういうところも「みなさんのイメージする遺言書に一番近い」部分です。
実は他の遺言書では他人が内容を知った状態で作ることが結構あるのです。
メリット3.一番安い
他人に支払う費用はかかりませんし、紙とペンと印鑑があれば作ることができますので用意するものもほとんどありません。複数の遺言書の内容が矛盾した場合には、矛盾する部分について新しい方の遺言書が優先して古い部分は撤回されたとみなすという決まりがあるので、
あの不動産はやっぱり別の人にあげたい
と思ったらその不動産についてだけ新しく遺言書を作れば、思い直した後の人に残すことができます。 このように何回も遺言書を作り直したりアップデートする可能性がある場合には安く作れることは大きなメリットとなります。
デメリット1.形式ミスをすると遺言書と認められなくなる危険性あり
遺言書は民法で決められている通りに作らなければ効果がありません。どれか一つでもミスしてしまうと内容全てが無効となってしまいます。そのため、確実に効果のある自筆証書遺言を作りたいと思ったなら専門家に相談しながら作った方がよいでしょう。
デメリット2.全部手書きだから書くのが大変
A銀行の預金は長男に相続させる、B銀行の預金は次男に…などと書いていくと結構な分量になります。デメリット3.保管場所に困る
せっかく作った遺言書なのに誰にも発見されないまま相続手続きが終わってしまった、なんてことになったら後で相続手続きがやり直しになるので大変です。また、最初に遺言書を見つけた人が隠してしまったり破棄してしまう危険性もあります。
作った自筆証書遺言はすぐに見つけてもらえるけど普段は簡単に手が届かないような絶妙な場所に保管しておかなければなりません。
実務上、銀行の貸し金庫に遺言書が入っていることがあるのですが、これは結構手続きが大変です。
遺言書が無いと思っていたのに突然遺言書が出てくることになるので、みなさん「えっ!?」って感じになります。手続きをお手伝いしている司法書士も「えっ!?」ってなりますね。
そんな実情もあってか、2018年に遺言書保管法(法務局における遺言書の保管等に関する法律)が成立しています。 施行は2020年7月10日となっていますので、それ以降であれば自筆証書遺言を法務局で保管してもらえるようになります。
公正証書遺言はしっかり作りたい人向け

公正証書遺言は、作るときも使うときもルールがしっかり整備されているので確実な遺言書を作りたい方にオススメの方式です。
公正証書遺言は一言で言うならば、がっしりとした確実性の高い遺言書です。
民法でのルールは次のような感じです。
第969条(公正証書遺言) 公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。 一 証人二人以上の立会いがあること。 二 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。 三 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。 四 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。 五 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。 |
あまり細かく読みたくないと思うので要点を挙げると
・本人のほかに「証人2人」と公証役場の「公証人」が作成に関わる
・遺言内容を本人と証人2人が確認して署名押印して、公証人が遺言書にする
という感じです。登場人物が一気に増えています。
メリット | デメリット |
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メリット1.作成に失敗しにくい
公証人も内容をチェックしているので、一人で作るよりも無効とされてしまう危険性が低くなります。手続きを司法書士や弁護士といった専門家に依頼していれば、専門家のチェックもあるのでさらに確実な内容の遺言書を作ることができるでしょう。
メリット2.保管もしてくれる
公正証書遺言を作ると原本は公証役場で保管してくれます。本人は正本・謄本を受け取ります。もし正本・謄本を紛失などしてしまったとしても原本は公証役場で保管されているので、改めて謄本を発行してもらうこともできます。
公証役場で保管される公正証書遺言の情報はデータベース化されるため、相続となったときには公証役場で遺言書がないか検索することができますよ。
公証役場で保管してもらえることにより、遺言書が見つからないまま相続手続きが進んでしまった!という危険性も減らすことができるのです。
メリット3.検認手続きしないですぐ使える
実は遺言書は通常裁判所に検認手続きの申立てをして、裁判所で開封する必要があります。しかし、公正証書遺言はこの検認手続きをしなくても良いとされているため、より迅速に相続手続きを進めることができます。
検認手続きを専門家に依頼することになると、一定の費用がかかってしまうので公正証書遺言で作っておくと検認手続きの費用を先払いしておくような効果もあるわけですね。
デメリット1.作るのに時間がかかる
公正証書遺言を作るには、事前に公証役場と打合せをして内容を決めていったり、公証役場まで足を運ぶ必要があったりと時間がかかります。公証役場に一回行ってその場で完成!とはならないのです。公証人に出張してもらうこともできますが、その場合は別途費用もかかってしまいます。費用の詳細は次の項目で。
デメリット2.費用が結構かかる
作成には公証人に公正証書作成の手数料を支払う必要があります。これは遺言書に載せる財産の合計額によって以下のように決まります。
財産の合計額 | 公証人手数料 |
100万円まで | 5,000円 |
200万円まで | 7,000円 |
500万円まで | 11,000円 |
1,000万円まで | 17,000円 |
3,000万円まで | 23,000円 |
5,000万円まで | 29,000円 |
1億円まで | 43,000円 |
3億円まで | 5,000万円ごとに13,000円加算 |
10億円まで | 5,000万円ごとに11,000円加算 |
10億円超 | 5,000万円ごとに8,000円加算 |
このほか、公証人に出張してもらう場合は日当20,000円(4時間以内10,000円)に交通費の実費がかかり、公正証書作成手数料も1.5倍となります。
証人についても1人1万円~2万円くらいの報酬がかかります。
このように公正証書遺言はなるべく安く作ろうと思ってもそれなりの費用がかかります。
デメリット3.遺言の内容を知られてしまう
公証人に証人2人も内容を確認するので少なくとも3人の人間が事前に遺言の内容を知ることになります。誰にも知られずこっそりと遺言を作りたいのであれば、公正証書遺言ではできません。
秘密証書遺言は難しくオススメしない

秘密証書遺言は、「自筆証書遺言の秘密保持」と「公正証書遺言のがっしり」のいいとこ取りを目指した遺言書です。
条文もややこしいです(特に読まなくて大丈夫です)
第970条(秘密証書遺言) 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。 一 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。 二 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。 三 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。 四 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともに署名し、印を押すこと。 出典:e-Govウェブサイト(https://www.e-gov.go.jp) |
・本人が遺言書を作って署名押印をする
・封筒に遺言書を入れて封をし、遺言書と同じ印鑑で封印する
・封書を公証役場に持っていき、公証人と証人2人の前で「これが私の遺言書!」と宣言する
というような感じです。
メリット | デメリット |
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メリット1.内容の秘密が守られる
公証人や証人は封書しか目にすることはないので、遺言の中身を知られることはありません。自筆証書遺言と同じメリットですね。
メリット2.公証役場に作成記録が残る
秘密証書遺言では原本は本人が保管することになります。しかし、秘密証書遺言を作ったことは公証役場に記録が残りますので、相続となったときに遺言書があるはず!ということは伝わります。
メリット3.内容を自筆で書かなくてよい
自筆証書遺言では全て手書きしなければなりませんでしたが、秘密証書遺言では封筒に入れる遺言書は印刷したものでも大丈夫です。ただし、署名押印は必要ですが。
デメリット1.内容チェックがないので無効の危険性がある
本人だけで内容を作るため、いざ開封したら意味が曖昧と判断されて無効とされる危険性があります。自分ではこれしか意味の取りようがないと思っても、第三者から見ると曖昧であることもよくあります。
デメリット2.費用がかかる
公正証書遺言では、遺言書に記載する財産の合計額が基準となりましたが、秘密証書遺言は中身は分からないため、公証人手数料は一律11,000円となっています。証人の費用についてもかかりますので、公正証書遺言よりは抑えられるものの費用はしっかりかかります。
デメリット3.ほとんど作っている人がいない
秘密証書遺言はいいとこ取りを目指していますが、ほかの遺言書と比べて中途半端でメリットが薄く、ほとんど作られていません。公正証書遺言のような内容のチェックがなく保管もしてもらえない。
自筆証書遺言のようなお手軽さや費用の安さもない。
特別方式4種類は普段作れない
隠れた4種類の特別方式の遺言は、それぞれ緊急時にだけ作ることができる遺言書です。民法に作り方が定められていますが、実際に特別方式で作ることにはならないので調べておく必要はありません。
まとめ
遺言書を作ろうかな?と思ったなら有力となるのは自筆証書遺言か公正証書遺言です。とりあえずお手軽に作ってみたい、細かくアップデートしたいという希望があれば自筆証書遺言。
がっしりと確実なものを作っておきたいという希望があれば公正証書遺言で作るのが良いでしょう。
どちらの方法で作るにしても、司法書士や弁護士といった専門家に作成の相談をすることができます。
どちらで遺言書を作るのか迷うことがあれば相談し、サポートを受けながら遺言書を作ることも検討してみてはいかがでしょうか。
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